※パネル資料の利用には、閲覧のみ可能のもの、印刷物は内部利用に限るものと、制限を設定しています。複写、印刷物等を対外的にご利用を希望される場合は、JFMAまでご一報ください。
■優秀ファシリティマネジメント賞 受賞は、3件である。
最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞): 神奈川県住宅供給公社
( 持続可能な社会構築のための広域FM 神奈川県住宅供給公社の事例)
既存公社住宅ストックの再編成・利活用が大きな経営課題となっている同公社は、約7年間、FMの視点による経営改革を推進している。ライフステージの変化に対応する賃貸住宅事業、「生涯自立」を掲げる高齢者住宅事業、SDGsへの取り組み、財務再編成など、山積する課題を幅広く、着実に解決して前進させ、成果をあげている。FMの財務・品質・供給の3視点がバランスよく、長期を見据え戦略的に展開されている。その基盤となっているのがFMのデータベースで、全施設の状況が的確に把握でき、PDCAを回して更新されている。理事長以下、80名足らずの職員により、賃貸住宅114団地、13500戸、高齢者施設970室について、ニーズの変化、地域社会への貢献なども盛り込み、負債を低減するなど、賢く経営し、活用する事業を展開しており、高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 東京都豊島区
( 消滅可能性都市が掲げる持続可能な公園経営 )
公立公園の活性化事例の応募である。地元と地元をよく知る民間企業、行政の三者協力による新しい公園経営のビジネスモデルを創造している。カフェレストランの営業、イベントスペースの運営、ランドスケープデザインなど、心地よい公園のハードとソフトの両立により、住民が寄り付かなった状況を大きく改善して、約3年間の実績がある。地下に設けた変電設備の賃料、レストラン売上の一部など、一般の自治体公園にはない収益があり、それを原資にして投資の回収、公園運営費の充当を行っており、黒字経営となっている。豊島区行政では、池袋駅周辺の4公園の整備構想を策定し、4公園をそれぞれ性格を変えて活用する計画が半ば完成し、運用されている。公園というファシリティをまちづくりに活用している好事例といえる。
優秀ファシリティマネジメント賞: 地方独立行政法人 岐阜県立下呂温泉病院
( 全室個室病棟の県立下呂温泉病院におけるFM実践活動 )
2014年竣工の県立病院の計画と運営に関するFM実践事例の応募である。2009年より基本計画を開始し、プロポーザルでの設計者選定、その後の設計期間を通して、公立病院としては画期的な全室個室病棟(差額なし)の計画が練り上げられた。竣工後においても、看護師の動線が長くなる課題を解決する効率的な看護体制への改善など、PDCAを回す経営が継続されている。病棟水回りなどを工夫し、工費もローコストに抑えられている。現理事長のリーダーシップとスタッフの努力により、全個室型病院の企画・計画・設計、竣工後の運営と改善が、一貫して取り組まれている点が高く評価された。継続的な改善活動を担保するようFMの組織体制を充実することが今後の課題といえる。
■特別賞 受賞は、1件である。
特別賞: 日本郵便株式会社 株式会社アカツキライブエンターテインメント
( 横浜中央郵便局別館における施設暫定活用プロジェクトの取組み )
日本郵政グループのCRE戦略実践の1つとして、遊休施設の時限的活用により、地域の活性化を促進した事例の応募である。横浜中央郵便局別館は、機能移転の結果、空き施設となり、再開発プロジェクト始動を待つことになった。そこで、横浜駅東口の好立地を利用し、再開発始動までの暫定期間を賑わいのある都市活性化が期待できるテナントをプロポーザルにより誘致し、施設のリノベーションを行い、有効活用する施策が採用された。財務的なスキームはオーナー側のスケルトン貸し、内外装・設備など新規改修(資本的支出)はテナント側で、投資リスクはテナント側が大半を負う代わりに、賃料は軽減されている。一時的な空き施設を活用する代替策としては、都市の活性化、イメージ向上に貢献するユニークな好事例だと認められる。
■技術賞 受賞は、1件である。
技術賞: 株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
( 自然の原音(周波数)を活用し、空間の快適性を高める技術の開発 )
自然の原音を高解像度で活用して、人の生活する音環境をつくるBiophilic Sound Design(BSD)の技術についての応募である。心地よさ、サウンドマスキング効果、リラックス効果、サーカディアンリズムの生理効果などが期待できる。同社のハイレゾ音源、ハイレゾ再生の技術を活用して、鳥の声は上から、川のせせらぎは下からというように、自然界に居るような音空間を再現し、音環境づくりを行う。音源は季節の変化などに応じて定期的に更新される。すでに約200の適用事例があり、FMの分野での音環境づくりの技術として評価できる。
■功績賞 受賞は、3件である。
功績賞: 大島 芳彦 ( 株式会社ブルースタジオ )
( ブルースタジオ20年間の実践と書籍「なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか」 )
応募者は、2000年より約20年間にわたり「RE*innovation」を掲げてリノベーション事業を継続してきた中心的な存在である。本応募は、FMとつながりの深い一連のリノベーション事業とそのエンジンとなってきた個人の業績に対するものである。「リノベーションとは、つくることにあらず、使いこなすこと」、あるいは「リノベーションは、人・場所・時間に関する潜在能力を最大化すること」というリノベーションの定義づけは、FMのめざす「賢く使う」ことに通じるものといえる。こうした発想のもとに、さまざまな20年間のプロジェクトを通じて、人・街の潜在力を見出し、それを再編集して暮らしの総合的な環境を力強く、かつ優しく愛着のもてるものに育てていく努力を積み重ねてきたことに、共感する。FMの視点に照らして、十分な功績がある。
功績賞: 湯淺 かさね ( 千葉大学大学院 博士研究員 )
( 公共施設屋外におけるパブリックスペイシャルFMに関する研究(博士論文))
博士論文の応募で、同論文の表題にある「パブリックスペイシャルファシリティマネジメント(PSFM)を」テーマとしている。PSFMは、公共施設の屋外空間が空間的な拡がりをもつ人々の活動の場となり、パブリックスペースの機能を発揮できるように組織的・継続的に取り組むマネジメント活動をさす。本論文では、「パブリックスペースのあり方」が「まちのあり方」に大きく影響するという視点のもとに、すでに膨大なストックがあるパブリックスペースを、あまり大きな費用をかけずにいかに活用するかというマネジメント論を提言している。PSFMの視点による事例の評価の後、最終章では21項目にわたる要求事項、4つの特記事項をまとめて、地方自治体全体、FM担当課、各施設所管課、地域住民、近隣事業者などが取り組むうえでの要点を整理している。これまで公共FMでは、建物がマネジメントの対象となっていたが、本論文では、屋外空間についても適切に活用できるマネジメントをめざすべきという新しい視点を提供し、FMの普及・発展によい影響を与えるものとして評価された。
功績賞: 故障・不具合に関わる研究グループ
代 表 高草木 明
須藤 美音、千明 聡明、小松 正佳、大澤 昌志、丹羽 涼介
( ビルメンテナンスの記録に基づく故障・不具合に関する一連の研究 )
本応募では、2001年〜2019年の期間に発表された研究論文23編について「一連の研究」の応募対象としている。個人のFMへの功績として評価するには、一括りにはしにくい状況なので、研究グループを評価対象として、個々の研究論文についてFMへの貢献を評価することとした。これらの研究論文には、オフィスビル、医療施設などのビルメンテナンスの現場で起こる事象を研究対象としている点、保全業務にまつわる故障や不具合を研究テーマに取り上げている点で、FMの運営維持の業務に参考となる知見が数多くある。
■奨励賞 受賞は、以下の5件である。
奨励賞: 岩手県盛岡市
( 盛岡市における公共施設マネジメントの実践と成果 )
約10年間の同市における公共FMの取り組みについての応募である。2015年度に「公共施設保有最適化・長寿命化中期計画」を策定・公表し、翌年度から実施に取り組んでいる。財政部に資産経営課(8人)を置き、FM担当が修繕・改修の予算権限をもち活動している。市民との合意形成推進会議や意見交換会実施、庁内での合意形成での1次評価、2次評価など、FM先進自治体に学んで総合的に推進している点が評価された。予算企画権限、総量縮減と長寿命化、PPPへの取り組み、合意形成など、バランスよく進めている観があるが、市民とのコラボレーションを重視した施策立案とその実施など、盛岡市独自のFMのさらなる展開を期待したい。
奨励賞: 長崎県
( 長崎県新庁舎におけるFM戦略 〜つながる働き方の本格展開へ〜 )
長崎県本庁舎の移転・新築を契機とした職員の働き方とワークプレイスの改革が中心となる応募である。分散化庁舎の統合化、高い性能の防災拠点新設、環境性能向上なども実現している。基本構想から竣工(2017年11月)、業務開始(2018年1月)までの約9年間のなかで、基本構想→ブリーフィングという川上段階で十分な時間を使い、建物・ワークプレイスの設計につなげている。旧来の部局別縦割りオフィスを打破するため、ワンフロアで最大4,800uのオープンオフィスとして、ABWに準じた多様なワークプレイスセッティングを用意し、部局間、職員間、訪問者とのコミュニケーション、ニーズに応じたワークプレイスセッティングの使用が促進される仕組みとしている。入居人数2,500人の大規模本庁舎のワークプレイス改革から働き方改革へとつなげる流れは、途半ばの観がある。従来通りの固定席を維持し、ABWのワークプレイスを加えたので、面積活用の点で課題がある。施設の改革を先行させ働き手の意識改革を促す手法は賛同できるが、FM組織の構築なしに、プロジェクトチームの運営体制を採用するなど、施設と運営の質の担保に課題が残る。運営段階での今後の継続的な改善と働き方改革の進展に期待したい。
奨励賞: 茨城県常総市
( 公民連携で進めるFM -公共資産を活かしたまちづくり- )
地方自治体の公共FMについての応募である。FMへの取り組みは約4年間で、公共施設等総合管理計画の要請以降となる。特徴は、FM担当者が2人と限られており、外部のアドバイザーを活用してFM施策の立案、実施を行っていることである。その成果としては、公募型プロポーザルによる市有地売却、包括施設管理業務委託、FMの職員研修(21回)、公共施設マネジメント協議(12回)、公共施設マネジメントプロジェクト発表(5案件)などがある。トライアルサウンディングなど民間の活用を視野においた活動もある。組織体制としては、市長を含む意思決定機関「公共施設等運用戦略会議」の創設、市長のFM取組みへの参加などがある。小規模の自治体における公共FM展開の可能性を示す例のひとつといえる。
奨励賞: 三菱自動車工業株式会社
( FM視点でのワークプレイス改革 〜NEW OFFICE建設〜 )
2020年からの中長期計画でFMの全社展開をめざす同社の現時点での応募である。現状到達点としては、@岡崎事業所の開発本館の新築によるワークプレイス改革、A東京・田町の本社移転新設によるワークプレイス改革、BFM部門の新設があげられる。大きな変化が到来している自動車業界の経営環境下で、ワークプレイスと施設資産改革に取り組んでおり、全社施設資産の最適化の権限をもつFMの組織体制が新たに構築されている点は評価できる。まだ同社のFM実践は始まったばかりで、今後の活動に期待したい。
奨励賞: 埼玉県深谷市
( 「マイナス」から「プラス」を生み出せ マイナス入札制度の確立 )
建物解体を前提とする土地売却において、建物解体費用が土地評価額を上回ってしまう場合に、予定価格をマイナスに設定して入札を行う仕組みに対する応募である。地方自治法など法令上の適法性、事務手続きなどをクリアして全国初のマイナス入札を行ったことについて、FMの技術、手法の視点から応募したもの。当初の難題をクリアするための多大な努力には敬意を表するが、FMの技術という視点で考えると、@不動産の売買ではデューデリジェンスが一般的になり、事前の詳細評価によりマイナス面を金額で評価することが民間企業では行われている、A地方自治体の不動産売却では、マイナス入札以外に、複数物件のバルク売却、プロポーザル方式など多様な手法があることから、独自の技術として評価するには難がある。とはいえ、マイナス入札制度が他の地方自治体へ波及することは、今後とも期待したいので、奨励賞とした。
(参 考)
1.日本ファシリティマネジメント大賞の概要
1)目 的:
FMに関する優れた業績等を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資することを目的とする。
2)表彰の種類:
(1)優秀ファシリティマネジメント賞(優秀FM賞)(FMの手法を取入れ、優れた成果を上げている活動)。
このうち、特に優れた活動を「最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)」とする。該当なしの場合もある。【公募】
(2)技術賞(FMに関連する、新しい手法・技術の取組み)【公募】
(3)功績賞(FMに関する優れた論文、出版、その他の活動)【公募】
※以上の応募の中から、特別賞、奨励賞の表彰を行う場合があります。
特別賞(FMに関する優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められる活動等について表彰します)
奨励賞((1)(2)(3)に準じ、今後の発展が期待される活動等について表彰します)
3)エントリー期間 : 2019年7月1日〜7月31日
4)応 募 期間 : 2019年7月1日〜8月31日
5)審査委員会委員(委員以下五十音順、敬称略):
委 員 長 | 北川 正恭 | (早稲田大学 名誉教授) |
副委員長 | 深尾 精一 | (首都大学東京 名誉教授) |
安達 功 | (株式会社日経BP 執行役員 日経BP総研所長) | |
鎌田 元康 | (東京大学 名誉教授) | |
亀山 渉 | (経済産業省 製造産業局 生活製品課 企画官) | |
住田 浩典 | (国土交通省大臣官房 官庁営繕部長) | |
長澤 泰 | (東京大学 名誉教授・工学院大学 特任教授 名誉教授) | |
村田 博文 | (株式会社財界研究所 代表取締役) | |
柳澤 忠 | (名古屋大学・名古屋市立大学 名誉教授) | |
米倉 誠一郎 | (法政大学大学院 教授・一橋大学 名誉教授) | |
成田 一郎 | (公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会 専務理事) | |
尚、審査委員会の下にFMの実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。 |
2.応募状況と選考経緯
1)応募状況: 優秀ファシリティマネジメント賞12件、技術賞4件、功績賞4件 計20件
2)選考経緯:
各専門委員が応募書類を精査し、各応募案件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀ファシリティマネジメント賞については8件、技術賞については2件、功績賞については2件を現地調査・ヒアリング対象に選定した。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選定することを決めた。
現地調査・ヒアリングの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会にて報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA 山田会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定した。
優秀ファシリティマネジメント賞応募12件のうち3件が優秀ファシリティマネジメント賞受賞、その中の神奈川県住宅供給公社は最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)に選ばれた。また、1件は特別賞、4件は奨励賞受賞となった。
技術賞は応募4件のうち1件が技術賞受賞、1件が奨励賞受賞となった。
功績賞応募4件のうち3件が功績賞受賞となった。
2019年12月19日、JFMA会議室において入賞者発表会を開催。
山田会長 挨拶 |
北川委員長 結果発表 |
報道発表の様子 (2019年12月19日(木)13:30〜 JFMAにて実施) |
3.授賞式・事例発表 のお知らせ
第14回 日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメント フォーラム2020)
2020年2月19日(水)〜 21日(金)開催 タワーホール船堀(江戸川区船堀4-1-1)
・2月20日(木)16:00〜18:00 第14回 日本ファシリティマネジメント大賞 授賞式(5階 小ホール)
・2月21日(金)10:00〜17:30 優秀FM賞、技術賞受賞者による事例発表講演(2階 瑞雲の間)
昨年までに行われた日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、以下をご参照ください。
・JFMA賞 受賞一覧 (第1回〜第13回)(800KB)
第14回 JFMA賞 受賞集 (2020年) |
第13回 JFMA賞 受賞集 (2019年) |
第12回 JFMA賞 受賞集 (2018年) |
第11回 JFMA賞 受賞集 (2017年) |
第10回 JFMA賞 受賞集 (2016年) |
・JFMA賞 受賞集 Vol.7 (第1回〜第11回)(約8MB)
・第 1回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 2回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 3回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 4回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 5回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 6回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 7回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 8回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 9回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第10回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第11回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第12回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第13回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
JFMA賞に関するお問い合わせは、下記までお願いします。
JFMA賞 事務局 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)
担 当 白須
〒103-0007東京都中央区日本橋浜町2−13−6 浜町ビル6F
TEL:03−6912−1177 FAX:03−6912−1178
E-mail: award@jfma.or.jp