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■優秀ファシリティマネジメント賞 受賞は、3件である。
最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞):
武蔵野市、公益財団法人武蔵野生涯学習振興事業団
( ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス 〜「アクションの連鎖」〜 )
武蔵野市立の旧西部図書館を武蔵境駅前に移転拡充し、図書館、生涯学習センター、市民活動センター、青少年センターなどの複数の機能を積極的に融合させた複合施設の活用に関する応募である。図書や活動を通して、ひとが出会い、知識や経験を共有・交換しながら、知的な創造や交流を生み出し、地域社会(まち)の活性化を深められるような活動支援型の公共施設をめざしている。青少年だけの利用スペース、会話のできる子供連れのスペース、社会人用の有料コワーキングスペースなど活発な活動を誘発する施設運営は、高く評価できる。施設計画のブリーフィングの成果として、カフェなどニーズに裏付けされた施設と開館時間の長い運営などがあり、6年目で、累計利用者数が1,000万人を超える。
優秀ファシリティマネジメント賞: 多摩医療PFI株式会社
( 創造的FM手法による公民のパートナーシップの実現 −我が国最大の病院PFI事業― )
東京都立多摩総合医療センター(789床)、東京都立小児総合医療センター(561床)2院による複合医療施設に関するFM事例の応募である。東京都がSPCに包括委託を行うPFI事業で、日本の医療施設PFIでは、最大の規模となる。SPCは、病院経営、医師・パラメディカルの人事など医療コア業務をのぞいて、施設管理、情報管理、病院運営サービス、医療器材管理、経営支援などのサポート業務を包括的にPFI事業として受託している。開院以来7年間の運営実績があり、医業経営の支援、情報管理を含む運営のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)体制は、よく整備されており、医業を支援するサポートサービスとして、経営に貢献している。また、BCP対応、CO2削減などで、大きな効果をあげている。
優秀ファシリティマネジメント賞: キユーピー株式会社
( グループ協働を促進するFM 〜その会話から生まれる 未来とつながる〜 )
2013年に竣工・開設した同社の研究開発拠点、仙川キユーポートの活用に関する応募である。同社のファシリティは、2016年に渋谷本社(市場づくり)、仙川キユーポート(ものづくりと新価値づくり)、中河原研修センター(人づくり)の3機能に統合再編成された。仙川キユーポートでは、4年間の運営実績がある。同オフィスは、研究開発の拠点と同時に、19社あるグループ会社のオフィスでもある。経営方針を受けてグループ各社が協働して商品開発に臨む場として機能しており、経営に貢献している。オフィスと研究施設を交互に積層したスタッキング、内周と外周の二重の平面計画など、施設プログラムがよくできている。運営体制は、19社の会議体中心で、FMを担当するキユーポート部スタッフは、本社の人員で、キユーポートのめざす姿(=グループ協働)の推進役や働きやすく成果の出しやすいオフィス環境づくりを担っており、グループアドレスによるワークプレイスの活用などで効果を発揮している。今後必要となる、建物の計画的保全を含めたFMの統括マネジメント体制の発展・充実を期待したい。
■特別賞 受賞は、2件である。
特別賞: 魚町サンロード商店街協同組合
( 魚町サンロード商店街におけるリノベーションまちづくり事業 )
北九州市の都心に近い商店街におけるまちづくりに関する応募。国家戦略特区認定、公道の商業利用、アーケード撤去とまちのリノベーション、民間まちづくり会社、道路管理まで含めたエリアマネジメントなどの手法を商店街の住民参画で実現し、運営を続けている。実績としては1年間程度、撤去したアーケードもまちづくりとしては狭い範囲にとどまるが、裏通りの商店街の暗い、不安全というイメージの払拭に成功している。まちを愛する住民の支援、北九州市など公的機関の支援、表の商店街とつなぐ役割をもつビッコロ3番街との連携など、近隣のリノベーションと併せて、まちの活性化に貢献している点を評価したい。道路の活用が対象という、FMの概念を超える応募で、特別賞となった。
特別賞: 株式会社スペースRデザイン/吉原住宅有限会社
( 築100 年を目指すビンテージビル「冷泉荘」におけるFM の取組み )
1957年竣工の賃貸アパートであった冷泉荘のリノベーションと活用に関する応募である。改修後は、賃貸オフィスだけでなく、貸スペースを設けてアートイベントなどに活用している。原状回復なしとする契約により、アート系、自由度を好む利用者の入居を後押ししている。また、管理人が常駐し、入居者同士をネットワークし、施設活用のイベント企画などを担当し、愛情をもって活用を促している点が特色である。再生・活用のFM事例としては、なるべく手をかけず、当初の感じを維持したいという意図のようであるが、旧賃貸アパート時代の悪いイメージを取り払い、明るく、親しみやすいものへの変革は成功している。また、建て替えではなく、築60年におよぶ建物を活用する施策を選択して、アートやリノベーションの情報発信を行っていること、近隣のイメージ変革、まちづくりにも貢献していることを評価したい。
■技術賞 受賞は、1件である。
技術賞: リユース・パートナー株式会社
( 原状回復研究所 〜遊休資産の利活用〜 )
原状回復工事、建替・処分にともなう解体工事などでは、廃棄物が多く出る。これを単に廃棄するのではなく、有価で買取して、リユース、リサイクルできるものは活用するというビジネスモデル創案・実施の応募である。原資産保有者(FM部門)側から見れば、廃棄物処分費の支出だけを見込んでいた状況が、売却益を多少なりとも入手できる利点がある。社会的には、価値のあるものは、リユース・リサイクルされることになり、資源の活用につながる。多様なリサイクル品の市場育成は、今後の「社会インフラ」の育成という日本全体の課題でもある。そのなかで、同社の事業は、FMに関連するビジネスモデルと考えられる。他社の参入など、今後のビジネスの発展につながるものと評価できる。
■功績賞 受賞は、以下の2件である。
功績賞: 早稲田大学理工学研究所・公共所有不動産の経営研究(MoRE)
( 公共施設マネジメントを実行に移すための解説書 )
2017年に出版された、公共施設マネジメントにどのように向き合うかを解説した書籍に関する応募である。建築の点検や維持保全の方法論など、公共施設マネジメントのハウツー論ではない。自治体職員が取り組むための方法論として、@基本的な基礎データの収集と活用、A実行体制の構築、Bマネジメントを段階的に進める必要性と手法などに焦点を当てている。「公共施設マネジメントは、つまるところ、日本の将来、地方の将来をどのよう姿にしたいのか、が出発点になるべき」という。公共施設についても、公共サービスのあり方をどうするかという思考を出発点にして、関係性を考え、将来のまちづくりのなかで位置付ける必要があると説く。副題のとおり、「悩める職員向け」で、準備段階からどうするか、各地にある事例からどう学ぶか、という基本的な解説がされている。公共FMに取り組む自治体職員の道案内となる出版物といえる。
功績賞: 齋藤 隆司氏(日本郵政株式会社)
( FM推進につながる発注者改革 への提言(学位論文) )
京都大学の工学系の博士論文についての応募である。学位授与者は日本郵政でFM関連の業務に従事しており、その立場と実務経験をもとに、郵政建築における建築プロジェクトの発注者の役割の変化と課題に着目した内容となっている。その考察から建築プロジェクトにおける発注者の役割の重要性を見いだし、以下のような提言にまとめている。@発注者責任制の導入、A発注者組織内のプロジェクトマネジャーの設置、B発注者の要求条件に基づくブリーフィング導入による要求の明確化、Cプロジェクト参加者間の協調関係構築のためのパートナリングの導入である。建築プロジェクトでは、ファシリティマネジャーは、ユーザーである発注者側の立場にある。発注者側の業務改革を促す本論文は、FMにもよい影響を与えるものといえる。
■奨励賞 受賞は、以下の5件である。
奨励賞: 富士ゼロックス株式会社
( 全社事業所施設ファシリティの統括管理活動の実践 )
同社の保有施設に対する計画的保全に関する応募である。2009年より取り組みを開始し、2015年から全対象施設の統括的保全に取り組める体制となった。中長期修繕計画策定、毎年の施設点検、優先度の統括的判断など、保全の統括管理体制が整備され、実行されている。経営陣の承認のもとに、保全の費用が確保され、優先度をつけて実行されている。民間企業では、既存建物の修繕費の確保がむずかしく、保全は壊れたら直すという事後保全にとどまっている例が多い。計画的な保全に対する取り組みを啓発するうえでも、好事例といえる。今後、同社の保有施設の効率化と活用と今回の計画的保全の業務の連携を期待したい。
奨励賞: 株式会社リンクアンドモチベーション
( ファシリティマネジメントによるエンゲージメント経営の実践 )
傘下のグループ13社を含む本社オフィスを、6,000uほどの広いワンフロアに集約し、かつ間仕切の少ない大部屋にレイアウトするワークプレイスづくりと運用に関する応募。オープンなワークプレイスはグループアドレスの運用で、約750名が入居している。コミュニケーションを活性化するという意図は、ワンフロアが巨大なので、ある程度にとどまるが、大胆な挑戦といえる。銀座の立地がよい印象を与えていることもあり、同社がビジネスとしているエンゲージメントが22%向上している。研修などに訪れる顧客からの評判もよい。ただし、移転前と比べて経費は増加している。FMの推進体制は専任ではなく、本社ではグループデザイン室が総務的な機能のなかで兼任している。移転統合化が2017年5月なので、今後のワークプレイス運用での適切な評価と改善を期待したい。
奨励賞: 株式会社リクルートホールディングス
( 時代を先取りする働き方変革を推進・進化させるFM )
第7回JFMA賞奨励賞の受賞後、2012年以降の活動に関する応募である。主として、働き方改革への取り組みと連動したリモートワークの全社導入、コワーキングスペースの利用、全国へのフリーアドレス拡大などを行っている。「ハイブリッドオフィス化」と称する実空間とサイバー空間の併用は、欧米では一般的である。2016年からのリクルート全従業員のリモートワークは規模が大きく、グループにも拡大している点は評価できる。フィージビリティスタディ実施による検証と改善などもFMで使われる手法であるが、活用されている。全社的リモートワークの開始から1年半の実績があり、それにともなう本社セントラルオフィスの改革は、40階については実施済である。他の階については、今後のリモートワークの進展にともなう新しいセントラルオフィスのあり方を示すものとなるはずで、その発展を期待したい。
奨励賞: 株式会社三技協
( 新社屋による全社員の交流力・創造力・発信力を高める働き方改革 )
同社の50周年を機に開設したコミュニケーション棟と、従来の執務棟の活用事例に対する応募である。情報通信関連のサービス&エンジニアリング企業である同社は、10年来フリーアドレスやペーパーレス化など働き方改革を進めてきた。コミュニケーション棟「MIRAIMA」の活用は、意識改革を含めた働き方改革を加速したいという経営方針を受けたものである。ビジネスドメインがつねに変化する情報通信の経営環境において、多能工的エンジニアをめざす職員の意識改革を意図しており、発展途上ではあるが、成功している。FM担当組織の体制はないが、多能工的総務の役割とされている。
奨励賞: 阪神高速技術株式会社、かいせき屋倶楽部
( LCM支援システム共同開発による計画保全業務の実践と運用 )
LCM支援システムの開発に関する応募である。システムの利用主体で、保全を担当する阪神高速技術と、システムの開発・運用を担当するシステム企業の共同応募である。60年の長期修繕計画の策定、中期5年間によるFCI算出によるシミュレーションと保全優先度のポートフォリオ分類、保全の業務プロセスの改善を含めたシステム利用環境の改善など、保全の業務効率化、改善を可能にしている。計画的な保全に関するFM専門家のコンサルティングがあり、実用的なLCMシステムが開発・運用されている。汎用性も期待できる。
(参 考)
1.日本ファシリティマネジメント大賞の概要
1)目 的:
FMに関する優れた業績等を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資することを目的とする。
2)表彰の種類:
(1)優秀ファシリティマネジメント賞(優秀FM賞)(FMの手法を取入れ、優れた成果を上げている活動)。
このうち、特に優れた活動を「最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)」とする。該当なしの場合もある。【公募】
(2)技術賞(FMに関連する、新しい手法・技術の取組み)【公募】
(3)功績賞(FMに関する優れた論文、出版、その他の活動)【公募】
(4)特別賞(FMの特定分野および海外において優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められる活動等)【非公募】
(5)奨励賞(優秀FM賞、技術賞または功績賞に準じ、今後の発展が期待される活動等)【非公募】
3)エントリー期間 : 2017年7月1日〜7月31日
4)応 募 期間 : 2017年7月1日〜8月31日
5)審査委員会委員(委員以下五十音順、敬称略):
委 員 長 | 北川 正恭 | (早稲田大学 名誉教授) |
副委員長 | 深尾 精一 | (首都大学東京 名誉教授) |
安達 功 | (株式会社日経BP 執行役員) | |
鎌田 元康 | (東京大学 名誉教授) | |
川元 茂 | (国土交通省大臣官房 官庁営繕部長) | |
栗田 豊滋 | (経済産業省 製造産業局 生活製品課 企画官) | |
長澤 泰 | (東京大学・工学院大学 名誉教授) | |
村田 博文 | (株式会社財界研究所 代表取締役) | |
柳澤 忠 | (名古屋大学・名古屋市立大学 名誉教授) | |
米倉 誠一郎 | (法政大学大学院 教授・一橋大学 特任教授) | |
成田 一郎 | (公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会 専務理事) | |
尚、審査委員会の下にFMの実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。 |
2.応募状況と選考経緯
1)応募状況: 優秀ファシリティマネジメント賞13件、技術賞3件、功績賞3件 計19件
2)選考経緯:
各専門委員が応募書類を精査し、各応募案件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀ファシリティマネジメント賞については10件、技術賞については3件を現地調査・ヒアリング対象に選定した。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選定することを決めた。
現地調査・ヒアリングの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会にて報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA 山田会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定した。
優秀ファシリティマネジメント賞応募13件のうち3件が優秀ファシリティマネジメント賞受賞、その中の公益財団法人武蔵野生涯学習振興事業団は最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)に選ばれた。また、2件は特別賞、4件は奨励賞受賞となった。
技術賞応募3件のうち1件が技術賞受賞、1件は奨励賞受賞となった。
功績賞応募3件のうち2件が功績賞受賞となった。
2017年12月20日、JFMA会議室において入賞者発表会を開催。
山田会長 挨拶 |
北川委員長 結果発表 |
報道発表の様子 (2017年12月20日(水)13:30〜 JFMAにて実施) |
3.授賞式・事例発表 のお知らせ
第12回 日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメント フォーラム2018)
2018年2月21日(水)〜 23日(金)開催 タワーホール船堀(江戸川区船堀4-1-1)
・2月22日(木)16:00〜18:00 第12回 日本ファシリティマネジメント大賞 授賞式
・2月23日(金)10:20〜17:10 優秀FM賞、技術賞受賞者による事例発表講演
昨年までに行われた日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、以下をご参照ください。
・JFMA賞 受賞事例集(第1回〜第11回)(約8MB)
・第 1回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 2回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 3回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 4回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 5回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 6回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 7回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 8回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第 9回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第10回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第11回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)