第5回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)入賞 発表!!

〜公共関係へも広がるファシリティマネジメント〜


 優秀FM賞 受賞は、今回4件である。
 最優秀賞(鵜澤賞)は、FMを公共施設の維持保全という側面だけでなく「都市の再生・リノベーション」として捕らえ、未来のあるべきまちづくりを考えて取り組んでいる東京都三鷹市
 その他、次の3件が 優秀賞 を受賞している。
 施工段階からFM推進体制を組織化し、コンピュータによるFMシステムを構築して、環境負荷低減、運営コスト低減などを実現している 国立国会図書館関西館
 保全情報システム導入、光熱水費の削減など、具体的にできるところから取組み、それをFM戦略にまで広げている 千葉県佐倉市
 多数の店舗などの修繕改修を対処療法的に行なってきたものをFM的に見直し、保全計画と工事の効率化をアウトソーシングすることで実現している 親和銀行(長崎県)。
 特別賞 受賞は、利用されなくなった独身寮等をシェア型賃貸住宅に改修、高付加価値化し、現代人の隠れたニーズを見事に引き出している 潟潟rタによるシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」。
 技術賞 受賞は、次の2件である。
 同志社大学三木光範教授 による「執務者の個別選好照度と高い省エネルギー性を実現する照明の分散最適制御システム」。
 鞄立ハイテクノロジーズ による「センサ技術を活用した組織活動可視化システム ビジネス顕微鏡」。
 功績賞 は、次の3件が受賞した。
 松岡利昌氏監修による翻訳・編集委員会 が翻訳した「世界のFM基本参考書『ファシリティマネジメントハンドブック』の日本初の翻訳出版」
 日本IBM本社ビル記録誌編集委員会 による「日本IBM本社ビル1971-2009、建築とファシリティマネジメントのライフタイム記録」
 板谷敏正氏の学位論文、「法人所有不動産の施設マネジメントに関する経営的視点からの分析」
 その他に、以下の4件が、奨励賞 を受賞した。
 鞄燗c洋行 の「ユビキタス協創広場CANVAS」、学校法人西南学院 の「スクールFMの実践」、東京都北区立中央図書館 の「図書館におけるFMの取組」、東京海上日動システムズ の「FMを通して『社員のやりがい発揮と社会貢献』を実現」である。
                                          審査委員長 沖塩莊一郎

1.JFMA賞の概要
目 的: FMに関する優れた業績及び功績のあった組織と個人を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資する。
(1)表彰の種類
  日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
  @優秀ファシリティマネジメント賞(FM手法を取り入れ、優れた成果を上げている活動)(公募)
  A特別賞
    (FMの特定分野において優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められる取組み)
  B技術賞(FMに関する新しい手法・技術の取り組み)(公募)
  C功績賞(FMに関する優れた論文、出版、その他)(公募)
  D奨励賞 (非公募)
(2)第5回JFMA賞募集期間
  2010年7月10日〜9月10日
(3)第5回JFMA賞審査委員会委員(委員長以下五十音順、敬称略)
  沖塩 莊一郎 (委員長、東京理科大学名誉教授)
  石福 昭 (社団法人建築設備綜合協会名誉会長)
  北川 正恭 (早稲田大学大学院教授)
  澤木 英二 (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)
  高辻 育史 (経済産業省製造産業局日用品室長)
  土屋 博 (JFMA専務理事)
  宮嵜 清志 (日経BP社建設局長)
  村田 博文 (株式会社財界研究所代表取締役)
  柳澤 忠 (名古屋大学名誉教授)
  米倉 誠一郎 (一橋大学大学院教授)
 尚、審査委員会の下にFM実践の実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。

2.第5回JFMA賞応募状況と選考経緯
応募状況: 優秀FM賞11件、技術賞3件、功績賞6件
選考経緯: 各専門委員が応募書類を精査し、各応募物件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀FM賞については11件、技術賞については3件を現地審査対象に選んだ。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選ぶことも決めた。
 現地審査とプレゼンテーションの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会で報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA坂本会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定し、1月18日JFMA会議室において入賞者発表会を開催した。


坂本会長 あいさつ

沖塩委員長 結果発表
報道発表の様子(2011年1月18日(火)13:30〜 JFMAにて実施) 
 

3.審査に当たって特に印象に残ったこと
 今回、優秀FM賞応募11件のうち、地方自治体関係が5件あった。そのうち2件が優秀FM賞を受賞、その中の東京都三鷹市は最優秀賞(鵜澤賞)に選ばれた。1件は奨励賞を受賞。
 
 惜しくも落選したもののうち1件は、認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の資格を持つ民間人を採用、組織を作ってFMに取組みだしており、数年後が楽しみである。もう1件は、応募物件は意欲的で評価されたが組織としての取組みに疑問が呈され受賞に到らなかった。
 
 他に、国の物件が1件優秀FM賞を受賞しており、今回はFMが公共に広まってきていることを強く印象付けた。
 
 民間で優秀FM賞受賞の親和銀行は、以前対処療法的修繕位しかしていなかったが、合併を機会に親銀行のFMを知り、銀行店舗などをFM的に見直し、劣化診断に基づく保全計画の整備からPDCAの回る体制をアウトソーシングと絡めて構築している。充分な専門スタッフを持たない組織のFM実践の好例と感じた。
 
 特別賞受賞の「シェアプレイス」は、利用されなくなった既存建物を高付加価値化して安定高収益化のシェア型賃貸住宅に改修するユニークな試み。近年類似の試みはあるが、ここは9棟496戸の実績を持ち、システム化している面が高く評価された。ただ、優秀FM賞とは少し異なると、特別賞となった。ワンルームより少し高めの賃料を設定しても、この施設の魅力から高い稼働率を示している。
 
 JFMA賞審査で現地に伺うと、ワクワク・ドキドキすることが多い。知恵を絞ればまだまだ日本を元気にするネタがFMの中に沢山あると強く感じた。
 

日本ファシリティマネジメント大会(JFMA FORUM 2011) を、
   2011年2月8日(火)〜9日(水) に行います。
  ・授賞式       2月8日(火)16:40〜18:35
  ・受賞者による講演  2月9日(水)10:00〜17:05


(敬称略)
項目 表彰対象 受賞者 受賞案件の特長




   最優秀賞(鵜澤賞)     東京都三鷹市
■FMを公共施設の維持・保全という技術的・財政的側面のみならず、「都市の再生・リノベーション」としてもとらえて取り組んでいる好例。
■市長のトップダウンだけではなく、都市再生推進本部という推進部門を核に、@長寿命化、A財政の健全化、その他の明確な目標の元に”横断的プロジェクト”を展開し、市民の視点にたった推進は高く評価できる。長期にわたり部長級職員が中心となって施策を立案し、事前事後の方針管理を”事業評価表”で行っている点も評価できる。
 
協働のまちづくりと
ファシリティ・マネジメント
〜都市の再生とリノベーション
   三鷹市の取り組み〜
(東京都三鷹市)
 
  
 
国立国会図書館
関西館におけるFM
(京都府相楽郡)
 
 
 
国立国会図書館
関西館

■施工段階からFM推進体制を組織化、コンピュータによるFMシステム(CAFM)の構築、環境負荷低減、運営コスト低減などを実現した公共図書館のライフサイクルマネジメントの取り組み事例。
■CAFM中心であるが、社会資産として質の高い施設管理やストックマネジメントの視点は評価できる。竣工から8年間継続活動をし、担当者移動による弊害を解決している点、見学や研修も開催して啓蒙活動も行っている点も評価できる。
 
佐倉市における
FMの取り組み 
−いま目の前にある
   FMから始めよう−
(千葉県佐倉市)
 
  
 
千葉県佐倉市 
■保全情報システムの導入、光熱水費の削減、庁用車削減など、具体的にできるところから取組み、市長によるトップダウンでFMを実践している市の例。
■公共FMとして、具体的に目の前にあることからFMを始めるモデルとして大変優れた例である。市長をトップとし、強力なコンセプトと推進体制がある。財務を中心にしたFM戦略を明確にして、縦割り組織に横串をさし、公共FMの実践事例としても評価でき、他の自治体にも参考になる。
 
 
親和銀行における
保有施設のFM・CM
サイクルモデルの実践について
(長崎県佐世保市)
 
  
 
叶e和銀行
■100棟を超える銀行店舗・社宅について対処療法的に修繕してきたものをFM的に見直し、保全計画と工事の効率化をアウトソーシングすることにより実現した事例。
■十分な専門スタッフを持たない組織がFMを実践する方法としての好例である。劣化診断に基づく保全計画の整備から実施、評価へとPDCAサイクルが回る体制を構築し、効果を創出している点が評価できる。また、外部協力者に丸投げせず、内部担当者が管理している点も良い。
 
 


シェア型賃貸住宅
「シェアプレイス」
利用されなくなった既存
建物を高付加価値化・安定
高収益化するFMの実践
(東京都)
 
  
 
潟潟rタ
■利用されなくなった独身寮等をシャア型賃貸住宅へ改修し、プライベートな専有空間を確保しながらコミュニティある賃貸住宅を実現した例。
■活用方法がなかった不動産を壊すことなく有効活用し、現代若者の隠れたニーズ(シェアプレイス)に解決策を与え、さらに高収益化し、新たな賃貸住宅を提案している点は、FM的視点の新たな不動産ビジネスモデルとしても高く評価できる。施設所有者にとってはCREの施策となる。
■不動産ビジネスの一形態とも言え、対象組織そのもののFMとは少し異なる面があることから特別賞となった。
 


執務者の個別選好照度と高い省エネルギー性を実現する
照明の分散最適制御システム
 

 
同志社大学
理工学部 教授
三木光範

■オフィス空間の中で省エネと知的生産性にポイントを置いた照明の個別制御システムの提案事例。
■並列分散最適化技術を応用し、個別の照度環境実現と省エネルギーの実現を ”知的照明システム”として理論を確立。現段階での業績に対する評価としては、執務環境の改善のおよび地球環境の双方への貢献をもたらす理論であり、評価できる。FM的視点に立った技術で、個人の好みにも応じられる点も含め、将来的に期待できるシステムであり、汎用化への期待も高い。
 
センサ技術を活用した
組織活動可視化システム
ビジネス顕微鏡
 

 
鞄立
ハイテクノロジーズ

■センサー技術を用いた人の活動測定システムの提案事例。
■「これまで目に見える形で把握することが難しかった組織内のコミュニケーション状況や会議室等の利用状況を分析することが可能」となることの価値は大きい。ワークプレイスにおけるコミュニケーションを定量的に評価するためのツールとして評価できる。約6年の実験、実践を経て、技術的な完成度は高いレベルとなっている。コストが高いが将来的には有効な技術。
 


世界のFM基本参考書
『ファシリティマネジメント
        ハンドブック』
の日本初の翻訳出版
 
  
 
「ザ・ファシリティマネジメント
ハンドブック」
翻訳・編集委員会  

■FMの先進国であり、FMの普及に貢献した著者(元IFMA会長コット氏)の著書「FMハンドブック」の翻訳本。
■本家本元の米国FMと日本のFMとの違いなどを知る上でも、効果がある一冊。FMに関する重要な文献の日本語訳であり、今後のFMの普及に貢献でき翻訳は十分価値がある。原書は、これまでJFMAを中心に日本のFMを確立するための教本の一つとして参考にしたバイブル的書物。「総解説」とは異なる観点で、後半に実践的に米国のFMを語っているハンドブックで活用できる。
 
日本IBM本社ビル
      1971-2009
建築とファシリティマネジメント
のライフタイム記録
 
  
 
日本IBM本社ビル
記録誌編集チーム

■一つのビルを計画時の記録から40年という長期に亘りワークプレイスも含めFM内容が記録された記録誌。
■日本を代表するオフィスビルの生涯にわたるライフサイクルデータをまとめた貴重な記録誌である。多岐にわたるデータベースの記録は多くの分野での参考になるとともに、後に続く建物に挑戦を促す貴重な出版物と思われる。歴史的な価値と、実用的な価値の両面で評価でき、FMのベンチマークとしても大いに活用されよう。サプライヤー側・ユーザー側両者から見た貴重なデータがわかりやすくまとめられており、FMの実践的バイブルとも言える書籍である。
 
法人所有不動産の
施設マネジメントに関する
経営的視点からの分析
(博士学位論文)
 
  
 
プロパティデータバンク梶@
代表取締役社長
板谷 敏正

■建物の機能維持、老朽化対策、施設再整備などに関する総合的な業務を「施設マネジメント」称し、その業務内容、組織体制の実態の調査分析を論文化したもの
■法人の所有不動産の施設マネジメントを法人の特徴、特性によって、組織体制、不動産の投資や維持管理に関する方針が異なっていることを定量的なデータで明らかにしている。これまでにない調査分析であり、今後の不動産の所有形態や、価値に関するあり方や可能性を検討する上で活用が期待できる。
 



内田洋行新川本社ビル
「ユビキタス協創広場  
   CANVAS」における
戦略的FMの実践
(東京都中央区)
 

 
鞄燗c洋行
■ICTのサービスプロバイダーのショールーム的空間作りとFMの実践で、オフィスを経営ビジョンの具現化に活用し、コアビジネスの強化を実現した事例。
■オフィス家具・ICTと教育市場の三位一体で事業展開をしている応募企業がICTを主力に事業展開する意思を自社の施設でアピールしている。プレゼンツールをはじめとしてICTの展開は目を見張るものがある。
■今後、組織全体のFMの発展への展開を見守りたい。
 
学校法人 西南学院
学びの場の持続的な
発展を目指すスクールFM
の実践(福岡県福岡市)
 
 
学校法人
西南学院

■生徒の活動分析に基づいた高校・中学・小学校建設の実践例で、先進的な環境配慮技術と快適性の両立および街並みへの貢献に取り組んだ事例。
■計画段階での省エネルギー、アクティビティ、都市景観などに配慮し、特に環境配慮技術の効果を継続監視し、運用管理面での活用が評価でき、施設面にも随所に工夫がみられる。さらに、検討成果をスクールマニュアルにまとめ情報共有・継続的展開への配慮も評価できる。また、受験者数が増加し、経営への貢献も評価できる。
■FMとしての取り組みはまだ始まったばかりのため、これからに期待したい。
 
北区立中央図書館
(東京都北区)
 

 
東京都北区立
中央図書館

■歴史的建造物の赤レンガ倉庫の保存と活用をし、誰もが利用しやすく、区民が主役の運営をめざした図書館の構築事例。
■区民と共に歩む図書館としてコンセプトを明確にし、条件整理を行い、運営方法・ユニバーサルデザイン・環境配慮等を盛り込んだプロジェクトの進め方は素晴らしい。地域コミュニティセンターとしての役割を果たし、市民に親しまれ、利用者の増加と活発な利用状況も評価できる。
■FMとしての取り組みはまだ始まったばかりのため、これからに期待したい。
 

 
東京海上日動システムズ
       株式会社
−FMを通して
「社員のやりがい発揮と
   社会貢献」を実現−
(東京都多摩市)
 

 
東京海上日動
システムズ

■合併統合後、社員の自主性を重んじ、「手づくり」「ローコスト」にこだわったオフィスづくりで、経営方針とファシリティ施策が連携した事例。
■一見、ニューオフィス賞的であるが、奇をてらうことなく、社員自らが「ノマド的ワークスタイル」「フューチャーセンターと称す議論の場」、「障がい者の働く場としてのスマイルカフェ」など、ファシリィティを業務改善へとつないだ好例。チェンジマネジメント手法の実践としても評価ができる。
■FMとしての取り組みはまだ始まったばかりのため、これからに期待したい。
 



募集要項

募集要項 [doc]



(参考)過去のファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者

昨年までに行われたファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、
以下をご参照ください。
第1回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
第2回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
第3回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
第4回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)