■優秀ファシリティマネジメント賞 受賞は、4件である。
最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞): シービーアールイー株式会社(CBRE東京本社オフィスにおけるFMの取り組み)
経営陣と連携したワークプレイス改革による企業改革の実践事例。首都圏4拠点を統合、丸ノ内明治安田生命ビルへの本社移転に際し、ワークスタイル、ICT、ブランディングなど様々な視点から現状を診断・分析し、その客観的データをもとに経営陣がワークプレイスのビジョンを提示、そのビジョン実現へのFMの成果は高く評価できる。社長を含めて全社員ノンテリトリアルという一体感のあるこの改革は、紙文書の92%削減、キャビネットの84%削減、電力消費量25%削減などに加え、企業ブランドの向上や人材獲得にも大きく貢献している。
事業用不動産サービスのグローバル企業CBREは、事業内容にFMサービスを含むだけに自社のFM推進体制は確立されており、ワークプレイスストラテジー部門があるのもユニークで、継続的な改善も期待できる。これからのワークプレイス構築の一つのモデルになるものとして、極めて高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 株式会社スクウェア・エニックス(デジタルエンタテイメント事業におけるFMの実践と成果 〜ナレッジアーチストの創造性を誘発するクリエイティブワークプレイスの構築〜)
ゲーム創造企業のワークプレイス改革を中心とする事例。個人的な活動を好む企業文化を変革するために、個人ブース主体から多様なコミュニケーションスペースを持つオープンなチームオフィスへと改めた。企業文化の改革や営業成績向上だけでなく、業務効率の向上、コスト削減を両立させている。分散オフィスの統合化、スタジオ併設による業務効率の向上、社員食堂の充実による志気向上施策なども評価できる。また、移転後2年間の運用管理もうまく実行されており、社員の持つ力をFMでどれだけ引き出せるかの挑戦が結果を出していることも高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 富山県氷見市(市庁舎の移転と庁舎活用によるFMの実践 〜廃校体育館のリノベーション〜)
老朽化した市役所本庁舎について、建替ではなく旧高校の体育館を用途変更して活用するという公共FMの事例。新庁舎づくりの過程で市民参加のワークショップを9回開催、移転後は「庁舎ガイドツアー」を実施し内外から多くの見学・視察を受け入れ観光スポットとしている。高い天井を活用して部門間の仕切りのないオープンな執務空間とし、窓口をすべてワンフロアに配置していることなども評価された。職員のワークプレイス活用、職員の意識改革、市民との対話などによる市民のFMに対する意識の高まりに、市長のリーダーシップが発揮されている。チャレンジングな取り組みが高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: ネットワンシステムズ株式会社(本社のワークスタイル変革と支店への横展開)
2010年以来継続している、ワークスタイルの改革に関連する応募である。昨年の本社オフィス中心の応募に続き、今年は中部支店など全国への展開が追加されFMの普及が実証されてきている。経営への貢献、利用者への貢献もデータの見える化という点で少し弱いが、データ収集と評価がされている。中部支店では、トップを含めてユーザーがファシリティの使い方をよく理解しており、施策の浸透が伺えることも高く評価された。今後、継続的なFM活動により本社オフィスの継続的改善、全国へのさらなる展開も期待したい。
■特別賞 受賞は、1件である。
特別賞: 公益財団法人福武財団(ベネッセアートサイト直島 〜直島メソッドによる地域活性化への取り組み〜)
1987年から今日に至るまでの直島、犬島、豊島を中心とする瀬戸内海の小島地域を活性化する活動に対する応募。地域と密接に結びつけた文化芸術運動と施設づくり、施設活用がされており、地域づくり、まちづくりのFMとして評価された。担当者のFMに携わってきた知見も活かされ、財団の基金による安定的な経営基盤をもとに適切な運営が継続されている点も評価された。人口数千人の島々に年間43万人が訪れ、国際的にも文化拠点としての知名度が高く、アートによる地域活性化は特別賞に値するものとして高く評価された。
■技術賞 受賞は、1件である。
技術賞: 滋賀県大津市(FVI評価による施設の2元管理とその運用)
公共FMに活用できる建物の劣化に関する評価技術の応募。FVI(施設価値指標)評価は、定期点検による不良部位の積み上げによるミクロな視点(保全の視点)の評価と専門家による潜在的不具合金額を可視化するマクロな視点(財務の視点)の評価とを組み合わせ、施設を2元管理するものである。保有する公共施設の実態を把握し今後のあり方を検討する際、軽い負担で情報蓄積ができる指標である。現場でのタブレットによる入力など、システムとしては活用性が高い。今後、活用実績の蓄積とともに、指標などの改良が望まれるが、公共FMで職員自らがリーダーシップを発揮し、自らが活用できるシステムを開発したという点が高く評価された。
■功績賞 受賞は、次の1件である。
功績賞: 本田広昭 氏(株式会社オフィスビルディング研究所)(オフィスビルにおける「あるべき姿の提言」出版活動)
2000年から2014年まで「次世代ビルの条件」「オフィスビル2030」など合計3冊にわたる「これからのオフィスビルのあり方」を提言する一連の出版物に関する応募。共著者は多岐にわたる専門分野の第一人者だが、「研究会」を重ねて方向性をすり合わせていること、利用者とFMの視点が中心に据えられていることが共通した特徴といえる。そうした出版のプロデュースを手がけた本田氏の功績が高く評価された。
■奨励賞 受賞は、以下の7件である。
奨励賞: 日本電信電話株式会社(NTTグループのグローバル化に対応するオフィスFMとCRE戦略)
NTTグループ持株会社のワークプレイス再構築に関する応募。グローバルにビジネス展開するグループの旗艦オフィスと位置づけられている。クラウドの基幹業務システム、シンクライアント導入、グローバルなWEB会議システムの多用など、ICTの活用も進んでいる。一般的なワークプレイス改革の手法は殆どが活用され、省スペースでコミュニケーションが改善されたワークプレイスとなっている。面積を17%削減したが、執務室面積は維持し、オープンな共用会議の倍増などによりコミュニケーション、コラボレーションを増加させている。グループ企業によるFMのプロが構築した手厚いFM推進体制と、コストを節約しながらも機能的なワークプレイスを実現していることが評価された。
奨励賞: NECネッツエスアイ株式会社(Empowered Officeコンセプトに基づくオフィス改革の実践 〜本社から地域・グローバル拠点への展開〜)
2007年より継続的に実践しているワークスタイル改革・コミュニケーション改革をねらったワークプレイスづくりの事例。FM推進組織が未確立であるが、営業部門を中心としたプロジェクトチームで、社員参加型のチームが人材育成面からも確立している点で、ユニークな体制・組織ともいえる。営業戦略と区別しがたい面があるが、FMの継続性、PDCAサイクルを回すことはある程度担保されている。また、経営トップの参加もある。財務的効果、働きやすさの改善効果、利用者満足度の改善など、適切に効果測定され、全国14拠点に横展開されている点が評価された。
奨励賞: 愛知県西尾市(西尾市が進める先導的な官民連携手法を活用した新たなまちづくりの出発点のための公共FM戦略)
公共FMの事例。先進自治体に学びながら、基本計画(2012年策定)に基づき、公共施設再配置実施計画(2014年〜2018年)を策定し、実行の初年度にあたる。市民ワークショップなどを通じた市民参加による計画案作成、事前方針の民間事業者との対話、運営管理企業主体のPFI方式の案など、従来にない手法がチャレンジされている点が特徴である。FM専任組織も、2012年設置の公共施設経営室が2014年資産経営課と課に格上げされている。市民を巻き込んでいる点、質と量の見直しが総合化されている点、独自の施策が取り組まれている点、更にFM担当者の熱意が評価された。
奨励賞: 医療法人幕内会山王台病院(東日本大震災の被災から病院としてのBCPとホスピタリティを学ぶ)
茨城県石岡市にある52床の地域中核的病院の施設改善を含む周辺の老健施設など8施設のFMに対する応募。大震災被災を教訓にして、施設の大規模改修、新棟増築、井水設備新設などにより、BCP対応の地域中核的病院に体制を整えた。防災研修、ホスピタリティ研修など運営面でも努力をしている。老健施設などを含めて、病院自体も高齢の患者が多く、地域の医療・福祉の厳しい現実を思わせる。FMの実施体制は弱いが、地域での医療・福祉を担う施設のFMの一つのあり方として評価された。
奨励賞: 株式会社ビューテクノロジー(ファシリティに特化したDCIMツール)
データセンターのマネジメントツール・ソフトウェアの応募。2014年よりVer.2(実用版)の導入が始まったところで、普及・発展はこれからという段階。既に大手金融機関、大手コンピュータメーカーに納入されており、今後、導入先での評価や活用、導入先の拡大について、更なる発展を期待したい。データセンター施設という限られた範囲ではあるが、FM領域のマネジメントツール技術として評価された。
奨励賞: 株式会社電通ワークス(「レポート」というコミュニケーションツールを活用した「FM普及活動」)
電通グループのFMを担う電通ワークス内の組織「ビル環境総合研究所」がFMと関連するテーマをもつ「レポート」という小冊子を発行している活動に対する応募。印刷物ではなく、電通ワークスのホームページからWEBアクセス、電通グループ社員が出力して顧客先に配布という発行形式である。テーマは、「環境報告書虎の巻」「ビル管理者に求められるBCP運用力」「ISOを活用したBCPのススメ」「ISO22301準拠のBCMS(事業継続マネジメント)文書事例」など、FM関係者に実務的なサポートとなるような情報を公開している点が特徴。「電通本社ビルのトップレベル事業所認定の説明資料」など、他では得にくい情報がある。FM普及に貢献するユニークな情報発信として評価された。
奨励賞: 四国ファシリティマネジメント協会(四国地区におけるFMの普及・発展)
四国地区を活動の舞台として、FMの普及・発展を図る組織の応募。2009年の設立以来約5年間にわたり活動を継続・発展させている。現在では、年1回程度の講演会、セミナー、見学会などを定期的に開催している。同協会には、民間企業や公共分野など幅広い団体が参加している。FMへの関心が急速に高まっている現在、四国地区でのFMの普及・発展をめざす同協会の活動が評価された。
2014年12月24日 審査委員長 沖塩莊一郎
(参 考)
1.日本ファシリティマネジメント大賞の概要
1)目 的: FMに関する優れた業績等を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資することを目的とする。
2)表彰の種類:
(1)優秀ファシリティマネジメント賞(FMの手法を取入れ、優れた成果を上げている活動)。このうち、特に優れた活動を「最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)」とする。該当なしの場合もある。【公募】
(2)技術賞(FMに関する、新しい手法・技術の取組み)【公募】
(3)功績賞(FMに関する優れた論文、出版、その他の活動)【公募】
(4)特別賞(FMの特定分野および海外において優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められる活動等)【非公募】
(5)奨励賞(優秀ファシリティマネジメント賞、技術賞または功績賞に準じ、今後の発展が期待される活動等)【非公募】
3)募集期間 :
2014年7月1日 〜 9月10日
4)審査委員会委員(委員以下五十音順、敬称略):
委員長 沖塩 莊一郎 (東京理科大学 名誉教授)
石福 昭 (一般社団法人建築設備綜合協会 名誉会長)
川元 茂 (国土交通省大臣官房 官庁営繕部長)
北川 正恭 (早稲田大学政治経済学術院 教授)
橋 政義 (経済産業省商務情報政策局 日用品室長)
寺山 正一 (株式会社日経BP 執行役員 建設局長)
深尾 精一 (首都大学東京 名誉教授)
村田 博文 (株式会社財界研究所 代表取締役)
柳澤 忠 (名古屋大学・名古屋市立大学 名誉教授)
米倉 誠一郎 (一橋大学イノベーション研究センター 教授)
池田 芳樹 (公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 専務理事)
尚、審査委員会の下にFMの実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。
2.応募状況と選考経緯
1)応募状況: 優秀ファシリティマネジメント賞12件、技術賞2件、功績賞3件 計17件
2)選考経緯:
各専門委員が応募書類を精査し、各応募物件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀ファシリティマネジメント賞については10件、技術賞については2件、功績賞については1件を現地調査・ヒアリング対象に選定した。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選定することを決めた。
現地調査・ヒアリングの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会で報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA 坂本会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定した。
優秀ファシリティマネジメント賞応募12件のうち4件が優秀ファシリティマネジメント賞受賞、その中のシービーアールイー(株)は最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)に選ばれた。また、1件は特別賞、4件は奨励賞受賞となった。
技術賞応募2件のうち1件が技術賞、1件が奨励賞受賞となった。
功績賞応募3件のうち1件は功績賞、2件は奨励賞受賞となった。
2014年12月24日、JFMA会議室において入賞者発表会を開催。
坂本会長 挨拶 |
沖塩委員長 結果発表 |
報道発表の様子 (2014年12月24日(水)13:30〜 JFMAにて実施) |
3.その他のお知らせ
1)日本ファシリティマネジメント大会(JFMA FORUM 2015):2015年2月18日(水)〜 20日(金)
2月19日(木)15:50〜17:40 第9回 日本ファシリティマネジメント大賞 授賞式
2月20日(金)10:30〜17:40 優秀FM賞、特別賞、功績賞受賞者による事例発表
※パネル資料のご利用には、閲覧のみ可能のもの、印刷物は内部利用に限るものと、制限を設定しています。複写、印刷物等を対外的にご利用を希望される場合は、JFMAまでご一報ください。
■応募要項 [doc]
昨年までに行われた日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、
以下をご参照ください。
・JFMA賞 受賞事例集(約16MB)
・第1回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第2回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第3回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第4回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第5回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第6回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第7回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第8回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)