優秀ファシリティマネジメント賞 受賞は、今回3件である。
最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞): 佐賀県武雄市(武雄市図書館・歴史資料館における官民連携による「新・図書館構想」の実現)
事業主体は武雄市、代官山蔦屋書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者。「市民の生活をより豊かにする図書館」のコンセプトで、図書館と書店・カフェ店舗が一体となった経営とし、人口5万人の市において開業3ヶ月で26万人の来館者、書籍貸出冊数2倍、さらに年間を通した賃料収入や運営費削減予定など、新しい公共施設の在り方に一石を投じていることが極めて高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: インテル株式会社(つくばオフィスにおけるFMの取組み)
つくば事業所における長年の継続的FMの事例。2011年の東日本大震災の被害復旧を兼ねて進められた新ワークプレイス戦略の導入による働き方とワークプレイスの改善。5年間で社員の満足度が61%から88%まで向上するなど、インテルFM部門の中長期戦略の一つ「Best Place to Work」を見事に実現。FMアウトソーサーと一枚岩になってのFMサービスも見事で、継続的な質の高いFM活動が高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 東日本電信電話株式会社(東日本大震災後の本格復旧に向けた取組み)
東日本大震災後の本格的復旧に当たり、従来から考慮していた「地震」「浸水」に、「広範囲・長時間停電」「津波」をキーワードとして従来以上の災害対策を検討。5段階の被災レベルに応じ、高台へ移転新築、重要室の水防対策強化、危険個所の改修、簡易工事、動作試験・安全確認等、復旧方針を整理し実施した。地域復興計画の確定が遅れた1局を除き2012年度中に本格復旧を終えた。経験と知見、新たなデータ分析に基づく戦略的な本格復旧案の作成と実施は、FMリスクマネジメントの大変優れた事例として高く評価された。
特別賞 受賞は、1件である。
特別賞: NPO法人 りくカフェ(まちのリビングプロジェクト「りくカフェ」)
東日本大震災で街の殆どを失った陸前高田市で、3つの医療関連施設のある一角に造られた、地域の人たちが気軽に集う場所「りくカフェ」。地域住民組織による自発的な動きからスタートし、民間企業の資材提供、専門家による建築・街づくり面での支援がある。コミュニティ空間を再生し、高齢者の外出機会の場、子育て環境の補足など、地域住民に大きく役立っている。現在は新しい方向を模索中の状況といえるが、ほんの小さい小屋(35u)でもそのあり方次第で仮設住まいの多くの被災者たちをホットさせ元気づける場となり得ることを示した好例として高く評価された。
技術賞 受賞は、次の1件である。
技術賞: 有限会社アルファ・アソシエイツ(オフィスサーベイシステム)
オフィス改革に先立つ情報収集や実施後の評価などの、WEBアンケート調査分析システム。2008年のサービス開始以来、約30件の調査実績がある。
功績賞 受賞は、次の2件である。
功績賞: 東京大学生産技術研究所・助教 森下 有(9(ナイン)グリッドによる情報記述の枠組み:人工物の分析における情報インターフェイスに関する研究)
博士論文の応募。FM関連情報について、「設計・生産・運用」の3フェーズを「作り手・インタフェース・使い手」の3属性に分類した「9グリッド法」によって情報構成の在り方を俯瞰的に比較する研究手法を用いている。9社を調査し、建築のライフサイクルにおける情報の実態について可視化を試みている。
功績賞: 元 学校法人芝浦工業大学財務部管財課担当次長 小山 武(私立大学のFM業務におけるスキルの取得と活用 〜長年にわたるキャンパスFMへの取組み〜)
1976年以来2010年まで、芝浦工業大学の技術系職員として総務・施設整備業務に携わり、@私立大学環境保全協議会、A日本ファシリティマネジメント協会、B大学行政管理学会ファシリティマネジメント研究会、等でキャンパスFMの研究・普及・啓発等に努めた小山氏の個人業績。芝浦工大キャンパス整備では、氏はFMの知識をフルに活用し成果を挙げている。
奨励賞 受賞は、以下の4件である。
奨励賞: TOTOマテリア株式会社(新たな技術と製品の創造を加速する「技術開発会社へ向けたワークプレイス改革」)
製造業の工場内オフィスの改善事例。従来型のオフィスを知識創造型へ変革したプロジェクト。フリーアドレスを含めた多様なワークプレイス・セッティングを用意、2日続けて同じグループエリアに着席しないなど手作り的にきめ細やかにルールが決められている。経営者の改革理念を見事に実現している。
奨励賞: 西日本電信電話株式会社(NTT西日本大阪支店におけるスペース有効利活用の実践)
戦略的なスペース有効活用事例。@新たなオフィス基準立案・適用による既存ワークプレイスの改善、A既存遊休施設のオフィスへの用途変更と賃借オフィスの削減、B空きスペースの賃貸化による収益の創出、の3つの施策により大きい財務的効果を挙げている。特に、電話局をシェアハウスにした事例はユニークである。
奨励賞: 総務省行政評価局 小島卓弥(書籍「公共施設が劇的に変わるファシリティマネジメント」の出版に関して)
行政機関の職員を主対象とした、公共ファシリティマネジメントについての理解しやすい案内書。「業務の効率化」「住民満足度向上」「災害に強い施設」などの切り口から、事例紹介中心にまとめたもの。FMの普及に貢献するものといえる。
奨励賞: 早稲田大学理工学術院理工学研究所招聘研究員 平井健嗣(既存公共施設長期使用のための改修手法に関する研究)
博士論文の応募。学校施設と公営住宅について、運営管理体制、運営管理指針、施設管理情報の保管などの実態調査を行なっている。外断熱など長期使用のための改修手法の検討もされている。
審査委員会特別賞 受賞は、次の2件である。
審査委員会特別賞: ソニーコーポレートサービス株式会社・(旧)ソニーエレクトロニクス・アジアパシフィック(アジアパシフィック地域におけるソニーのワークスタイル改革の展開の諸活動「FREE PROJECT」)
2000年以降、アジアパシフィック地域のソニーグループで行なった一連のワークプレイス改革の事例。賃料上昇と社員満足度の低迷を解決すると同時に、社員・マネジメント層のチェンジマネジメントも目指した。アジア地域での強い所有意識を乗り越え、全員着席可能なフリーアドレス導入、在宅勤務の本格導入などにより、利用者満足度も大幅改善。現状データの見える化、全員参加型ワークショップ開催、賃借面積削減など、FM手法が活用され、業績向上にも大きく役立っていることが、極めて高く評価された。
審査委員会特別賞: 日本郵政株式会社(上海万国博日本産業館 リユース建築へのチャレンジ)
万国博におけるパビリオン施設の企画・設計・建設・利用・利用後の処理に関する応募。「リユース建築」を謳い、環境面と経済合理性をポイントに、工事仮設用単管・クランプを最大限(使用鉄骨重量の40%)活用することにより、大幅なCO2削減と解体工事費の削減(98%以上)を可能にしている。軽量化で杭も不要に。敷地も造船所の遺構を活用し、570万人が来場する超人気館となった。6か月という使用期間を前提にしたパビリオン施設の在り方に新たな可能性を拓いた点が、極めて高く評価された。
審査委員長 沖塩莊一郎
1.日本ファシリティマネジメント大賞の概要
目 的: FMに関する優れた業績及び功績のあった組織と個人を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資する。
(1)表彰の種類
(1)優秀ファシリティマネジメント賞:
FMを実践し、優れた成果を上げている日本国内の法人・官公庁・団体などの活動【公募】
(2)特別賞:
優秀ファシリティマネジメント賞、技術賞及び功績賞の応募の中からFMの特定分野において
優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められるもの【非公募】
(3)技術賞:FMに関連する、新しい手法・記述の取組み【公募】
(4)功績賞:FMの普及に優れた功績のある論文、出版、その他の活動【公募】
(5)奨励賞:優秀ファシリティマネジメント賞、技術賞または功績賞に準じ、今後の期待されるもの【非公募】
(2)募集期間
2013年7月1日〜9月2日
(3)審査委員会委員(委員長以下五十音順、敬称略)
沖塩 莊一郎(委員長、東京理科大学 名誉教授)
石福 昭 (一般社団法人建築設備綜合協会 名誉会長)
北川 正恭 (早稲田大学大学院 教授)
鈴木 千輝 (国土交通省大臣官房 官庁営繕部長)
多田 俊樹 (経済産業省商務情報政策局 日用品室長)
深尾 精一 (首都大学東京 名誉教授)
宮嵜 清志 (株式会社日経BP社 建設局長)
村田 博文 (株式会社財界研究所 代表取締役)
柳澤 忠 (名古屋大学・名古屋市立大学 名誉教授)
米倉 誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター 教授)
池田 芳樹 (公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 専務理事)
尚、審査委員会の下にFM実践の実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。
2.応募状況と選考経緯
応募状況: 優秀ファシリティマネジメント賞12件、技術賞3件、功績賞4件、計19件
選考経緯:
各専門委員が応募書類を精査し、各応募物件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀ファシリティマネジメント賞については9件、技術賞については2件を現地審査・ヒアリング対象に選定した。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選ぶことを決めた。
現地審査・ヒアリングの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会で報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA坂本会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定した。
優秀FM賞応募12件のうち3件が優秀ファシリティマネジメント賞受賞、その中の佐賀県武雄市は最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)に選ばれた。また、1件は特別賞、2件は奨励賞受賞となった。
技術賞応募4件のうち2件が技術賞受賞、功績賞応募7件のうち4件が功績賞となった。
2013年12月25日(水)JFMA会議室において入賞者発表会を開催。
池田専務理事 挨拶 |
沖塩委員長 結果発表 |
報道発表の様子 (2013年12月25日(木)13:00〜 JFMAにて実施) |
3.その他のお知らせ
日本ファシリティマネジメント大会(JFMA FORUM 2014) 2014年2月12日(水)〜14日(金)
・JFMA賞授賞式 2月13日(木)15:50〜17:40
・受賞者による講演 2月14日(金)10:30〜17:40
優秀ファシリティマネジメント賞、特別賞、審査委員会特別賞受賞者による事例発表
※パネル資料のご利用には、閲覧のみ可能のもの、印刷物は内部利用に限るものと、制限を設定しています。複写、印刷物等を対外的にご利用を希望される場合は、JFMAまでご一報ください。
募集要項 [doc]
昨年までに行われた日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、
以下をご参照ください。
・JFMA賞 受賞事例集(約6MB)
・第1回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第2回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第3回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第4回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第5回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第6回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第7回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)