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■優秀ファシリティマネジメント賞 受賞は、5件である。
最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞): 青森県弘前市
(魅力あるまちづくりをFMで(魅せるFM)
−文化財施設等の新しい価値の創造と次世代への継承− )
人口約18万人を有する青森県第3の都市、弘前市による公共施設67.3万u(3.76u/人)へのFM導入による好事例。2010年の葛西市長就任以来、AMとFMの導入を掲げ、2013年にはFM担当部署を発足させている。2014年度には「弘前市経営計画」に「公共施設の適正管理」を掲げ、2016年2月には、公共施設等総合管理計画を策定し、2016年度末までに実行計画を策定中である。弘前城、弘前城公園、市庁舎、市民会館などを「文化財」として次世代に継承し、観光にも活用する戦略である。汚水処理施設の共同整備、下水処理場の統合化、電算システムのクラウドによる共同利用などの広域連携もある。市長自らが小学校でFMの講座を行うなど持続可能な自治体経営に不可欠なものとしてFMを位置づけ、普及啓発に努めている。さくら、りんご、お城、前川建築なども継承・発展すべき経営資源ととらえ、活用と継承を図っている。市庁舎も窓口をワンストップサービス化するなど行政改革も努力しているなど、総合的に高く評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 株式会社フジクラ
(FMによる健康経営の実現 −FHABを中心として−)
2011年より継続している健康経営と連携したFMに関する事例。社員の健康増進・疾病予防を、経営陣は経営課題と捉え、中期経営計画に盛り込んでいる。健康経営との連携では、社員の健康づくりを促進する場とそれを生み出す活動をFMと位置付けている。2016年より、全国の事業所に横展開を始めた。健康経営の数値化、見えるかに意欲的で、先進的な試みである。スタンディングデスク(作業面が上下する)についても、全国の事業所へ展開する予定。健康づくりに加えて、働きやすさ、生産性向上も掲げており、社内コミニュケーションも向上。健康経営を推進しながら、他のFM課題取組みに発展が期待されるなど評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: 株式会社NTTファシリティーズ
(ICTを活用した"Smart & Safety"なFMの実践)
自社ビルのオフィスでの実験的なFMへの取組みに関する事例。2011年から準備を開始し、建物は2014年に竣工して、運営を続けている。ICT活用によるワークスタイル改革、BIMとFMの結合による施設管理の効率化などが特徴である。入居するのは同社の研究開発部門で、これまでサービス提供者としての業務を手掛けてきたが、ここでは自社施設として、企画から建設、運営までインハウスのFMを実践する実験場としている。スマホを活用する設備操作、位置情報によるユーザー行動分析など意欲的な試みがある。ファシリティコスト36%削減、利用者満足度33%向上などの成果もあげ、評価された。
優秀ファシリティマネジメント賞: コニカミノルタ株式会社
(FMによる価値創造を目指した研究開発棟(SKT棟)の構築)
研究開発棟のワークプレイス改革にFMを取入れた事例。同社の日本での事業が研究開発中心にシフトしており、その拠点づくりとしてSKT棟が位置づけられている(生産拠点は海外に移転)。SKT棟の計画が始まった2013年からFMの組織体制整備が整い、全国の事業所に展開されつつある。現時点での成果としては2014年竣工のSKT棟と八王子事業所など数か所のワークプレイス改革がある。経営戦略と直結したワークスタイル改革、経営企画担当がFMの重要性に気づき、自らFM組織を立ち上げ統括マネジメント体制を築いたことなどが評価された。なお、余剰不動産を含めた施設資産の全体最適を図るFM戦略策定とその推進が今後の課題といえる。
優秀ファシリティマネジメント賞: 愛媛県 鬼北町
(文化財として保存した庁舎の活用とFMサイクルの浸透 −鬼北町庁舎再生への取組み−)
人口1万人強の町役場がFMに取組んでいる事例。鬼北町は、愛媛県南西部の中山間地域にあり、高齢化率は41%と非常に高い。町役場は、1958年竣工したレーモンド建築設計事務所の設計。耐震補強の必要性、老朽化への対応で、建替えを検討していたが、文化財(登録有形文化財)として活用を決定。改修費用は3.8億円+木造庁舎増築(2.9億円)で、建替え費用の10億円と比べて安価にできた。職員の意識改革、窓口ワンストップサービスなどワークプレイス改革、紙書類削減も進め、町おこしの拠点となっている。耐震改修は、デザインの特徴を損なわないよう配慮されている。その他、町では廃校校舎の企業誘致による活用、JRバス施設の用途変更による歯科医院への転用、旧法務局のケーブルTV局による転用など、官民問わず、既存施設の有効活用を図っている点なども評価された。
■特別賞 受賞は、1件である。
特別賞: 株式会社ジェイアール東日本都市開発
(鉄道高架下空間の有効活用による地域活性化事例 AKI-OKA STREET)
秋葉原・御徒町間の高架下の活用事例。耐震改修を兼ねた改修により、高架下に商業空間を創設した。2010年の一部開業以来、継続的に拡張・発展をさせており、年間100万人以上の流入者が地域社会に貢献している。周辺地域と連携したアクセサリー、革製品などものづくりの拠点となっている点、工房と店舗を同時に見せるテナントの意図的誘致などは評価できる。収益性など経営への貢献もある。列柱の利用や内部にストリートを設けるなど施設計画もよい。にぎわいの演出と「何もない空虚さ」からの脱却は、近隣の商業従事者からも好感されているなど評価された。
■技術賞 受賞は、1件である。
技術賞: 株式会社トヨックス
(輻射空調による快適性と省エネの両立ができるワークプレイスの実現)
同社が1998年より推進している輻射空調の技術に対する応募。19年間で、83件の実績がある。病院、大学校舎、オフィスビルなどに活用されている。同社の輻射空調は、天井に敷設した輻射面を主として利用するもので、換気、除加湿のシステムが組み合わされる。従来の空調方式と比較して30%程度の省エネが期待でき、ランニングコストを含むLCCも50年で20%程度割安になると試算されている。送風の影響が少なく、温度ムラが少ないなどの特長がある。健康経営指向の経営環境の中でのワークプレイス計画など、FMのねらいを実現する空調技術の1つといえる。
■功績賞 受賞は該当がなく、奨励賞のうちの2件となる。
■奨励賞 受賞は、以下の4件である。
奨励賞: 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(自律と協働を促進し「個と組織を生かす」ワークプレイスの構築)
ABWによる全席ノンテリトリアルオフィス(グループアドレス的)の構築を中心とする事例。2015年3月から2016年5月までのきわめて短期間にオフィスづくりのブリーフィングから移転完了までを終えている。ワークスタイル変革を掲げた調査・分析・検討を全員参加型で行い、ブリーフィングへとまとめている。コンサルティング企業としては、顧客の研修が多い特性を反映して研修施設が増床して別ゾーンに設定され、活用されている(全体で10%増)。効率的なスペース利用(370席→250席)や利用者POEなど調査を実施しており、総務担当がFMを兼務し継続推進している。
奨励賞: 日本メドトロニック株式会社
(メドトロニック日本法人の本社統合における戦略的FMの実践)
東京に本社を構える3社2拠点の統合移転プロジェクト中心の事例。ABWによるノンテリトリアルオフィスになり、オープン化と省スペース化、賃料削減を達成。プロジェクトチームでの活動で、移転後総務部に継承されているが、FMの組織体制は弱く、補完するために安全衛生委員会が定期的にオフィスを巡回し、課題の発見、是正の指示を行っている。完全な経営統合化には未着手の状態だが、ワークプレイスは境界なく、ユーザーは一体化して利用しており、ワークプレイスの統合化、FM担当の共同化も進んでいる。
奨励賞: 古橋 秀夫 氏(東京美装興業株式会社),宮原 俊介 氏(株式会社アーバン設計)
(ファシリティ・マネジメントに基づく建築生産プロセスの研究)
学位論文そのものではなく、その後の共同研究および教育の現場での普及活動などを含めた応募である。FMの視点では、運営維持段階情報のフィードフォワードによる企画・設計段階での活用、建物のライフサイクルを意識した設計・施工の重要性の訴求などがあげられる。今後、さらに研究が進められ、運営維持面からFMへ貢献することを期待された。
奨励賞: 安藤 亨 氏(三重県伊勢建設事務所)
(地方自治体オフィスの改修計画に関する研究)
三重県庁舎のオフィス改革に関連するオフィス計画とワークスタイルについての博士論文。三重県の本庁舎のオフィス改革は、2001年から進められた。論文前半は、オフィス改修計画と段階的な工事プロセスにより、実証と改善を発展させる方法の有効性を検証するものといえる。後半は、その後10年間のオフィスの変遷について、オフィスのタイプ分類とワークスタイルとの関連性についての研究と地方自治体オフィスの改修計画への提案となっている。FMへの貢献では、地方自治体職員のワークプレイスとワークスタイルの関係について研究した点がユニークである。1事例の解析だけでなく、さらなる事例研究が期待された。
(参 考)
1.日本ファシリティマネジメント大賞の概要
1)目 的:
FMに関する優れた業績等を表彰することにより、日本国内におけるFMの普及・発展に資することを目的とする。
2)表彰の種類:
(1)優秀ファシリティマネジメント賞(優秀FM賞)(FMの手法を取入れ、優れた成果を上げている活動)。
このうち、特に優れた活動を「最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)」とする。該当なしの場合もある。【公募】
(2)技術賞(FMに関連する、新しい手法・技術の取組み)【公募】
(3)功績賞(FMに関する優れた論文、出版、その他の活動)【公募】
(4)特別賞(FMの特定分野および海外において優れた成果を上げ、特別に表彰すべきと認められる活動等)【非公募】
(5)奨励賞(優秀FM賞、技術賞または功績賞に準じ、今後の発展が期待される活動等)【非公募】
3)エントリー期間 : 2016年7月1日〜7月31日
4)応 募 期間 : 2016年7月1日〜8月31日
5)審査委員会委員(委員以下五十音順、敬称略):
委 員 長 | 沖塩 莊一郎 | (東京理科大学 名誉教授) |
副委員長 | 深尾 精一 | (首都大学東京 名誉教授) |
安達 功 | (株式会社日経BP執行役員 建設局長) | |
川元 茂 | (国土交通省大臣官房 官庁営繕部長) | |
北川 正恭 | (早稲田大学 名誉教授) | |
中内 重則 | (経済産業省商務情報政策局 日用品室長) | |
村田 博文 | (株式会社財界研究所 代表取締役) | |
柳澤 忠 | (名古屋大学・名古屋市立大学 名誉教授) | |
米倉 誠一郎 | (一橋大学イノベーション研究センター 教授) | |
成田 一郎 | (公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会 専務理事) | |
尚、審査委員会の下にFMの実践者から構成された専門委員会を置き、審査委員会の補佐を行う。 |
2.応募状況と選考経緯
1)応募状況: 優秀ファシリティマネジメント賞14件、技術賞2件、功績賞2件 計18件
2)選考経緯:
各専門委員が応募書類を精査し、各応募案件にコメントと評点をつけ、専門委員会で議論修正した「専門委員会検討資料」と「応募書類」により審査委員会で討議し、優秀ファシリティマネジメント賞については10件、技術賞については2件を現地調査・ヒアリング対象に選定した。また特別賞、奨励賞は応募案件の中から選定することを決めた。
現地調査・ヒアリングの結果を踏まえ、専門委員会で推薦対象案を作成、審査委員会で報告を行った。審査委員会では、各委員から活発な意見が飛び交い、最終的には全委員一致で各賞候補を決定した。その後その結果をJFMA 山田会長に報告、了承を得て受賞案件を最終決定した。
優秀ファシリティマネジメント賞応募14件のうち5件が優秀ファシリティマネジメント賞受賞、その中の青森県弘前市は最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)に選ばれた。また、1件は特別賞、2件は奨励賞受賞となった。
技術賞応募2件のうち1件が技術賞受賞となった。
功績賞応募2件のうち2件が奨励賞受賞となった。
2016年12月20日 JFMA会議室において入賞者発表会を開催。
山田会長 挨拶 |
沖塩委員長 結果発表 |
報道発表の様子 (2016年12月20日(火)13:30〜 JFMAにて実施) |
3.その他のお知らせ
第11回 日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメント フォーラム2017)
2017年2月22日(水)〜 24日(金)開催
・2月23日(木)15:50〜17:40 第11回 日本ファシリティマネジメント大賞 授賞式
・2月24日(金)10:30〜17:40 優秀FM賞、技術賞受賞者による事例発表講演
■応募要項
1) 応募要項 | ダウンロード[.doc] |
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昨年までに行われた日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の受賞者の概要は、
以下をご参照ください。
・JFMA賞 受賞事例集(約16MB)
・第1回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第2回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第3回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第4回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第5回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第6回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第7回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第8回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第9回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
・第10回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)