持続可能な環境社会に向けた行動指針とICTの活用 |
部会長:横山 健児 株式会社NTTアーバンソリューションズ 総合研究所 街づくりデザイン部 上席研究員 工学博士 |
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SDGs,カーボンニュートラル,脱炭素,サーキュラーエコノミー,循環型社会, 生物多様性,ICT,データ連携基盤 |
サマリー | 人間の活動が温暖化を引き起こしていることは「疑う余地がない」としたIPCC第6次評価報告書から分かるように脱炭素化は地球規模での課題であるが,経済性を考慮した場合,性急な脱炭素化への移行は難しい状況にある。一方,廃棄物処理においては,サーキュラーエコノミーが注目され,日本でも資源を循環活用する経済モデルへの転換を目指している。また,「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では,2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が主要な目標となった。
本研究部会では,これら問題に対応するため,新たな仕組みづくりと新しい技術開発の状況,およびデータをリアルタイムに利活用するICTに関する調査研究を実施する。 |
活動内容 | SDGsやカーボンニュートラルが注目される中,エネルギー,廃棄物,生物多様性問題とICTの活用に関する調査研究をマクロ的視点(政策・技術)とミクロ的視点(実務)の両面から実施する。
※定例会開催日程(原則) 第4火曜日17:00〜18:30、年10回 |
成 果 | ファシリティマネジメントフォーラムで毎年研究成果を発表&当ホームページに掲載
※研究成果の詳細を閲覧することが可能です: 「研究成果 他」の項目へ |
メンバー | 部会長:横山 健児(NTTアーバンソリューションズ総合研究所)
部会員:井浦 博(トキオコーポレーション) 榎本 一郎(新日本空調) 大島 一夫(NTTアーバンソリューションズ総合研究所) 大 宣光(KENアソシエイト) 小木曽 清則(NPO埼玉マンション管理支援センター) 嶋津 祐美子(グローブシップ) 瀬尾 敬(オムロンエキスパートリンク) 棚町 正彦(清水建設) 成瀬 功(三菱地所設計) 沼 友和(三菱商事) 三木 麻侑(森田会計事務所) 宮下 昌展(エムケイ興産) 事務局:白須 公子(JFMA) |
持続可能な開発目標(SDGs)、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、生物多様性等、環境・エネルギー分野は非常に注目され、これら取組の情報開示が企業価値における重要なファクターとなっている。
2024年度は特に環境経営に注目してエネルギー環境保全分野を取り巻く動向調査を行う。
エネルギー環境保全に関わる以下の調査研究を実施する。
【政策面】
・持続可能な開発目標(SDGs)
・カーボンニュートラル
・サーキュラーエコノミー
・データプラットフォーム
・生物多様性
・環境経営
・環境認証
【技術面】
・省エネ
・再生可能エネルギー
・水素
・CCS/CCU
・原子力
・蓄電池
・次世代燃料
・ICT活用
【その他】
・JFMA会員等からの意見収集
・他研究部会とのエネルギー環境保全に関わる連携
・上記調査研究結果のフォーラム、ジャーナルでの発信
コロナ禍、ウクライナ情勢、液化天然ガス価格高騰により電力不足が起こり、休止火力の再稼働や原子力の活用が考えられている。2023年度はエネルギー問題を中心にエネルギー環境保全分野を取り巻く動向調査を行った。
2023年2月にグリーントランスフォーメーション(GX:Green Transformation)実現に向けた基本方針が閣議決定され、同年5月には「GX推進法」と「GX脱炭素電源法」が成立した。また、2023年12月の国連気候変動会議(COP28)では、2030年までに石炭、石油、ガスからの転換が合意されると共に、再エネや水素と並んで脱炭素技術に原子力が記載された。 そこで当研究部会では、GX実現に向けた政策と脱炭素に向けた石炭・原子力・バイオマス発電の動向を調査した。
GX実現に向けた政策の重要ポイントは、20兆円規模のGX経済移行債の発行(2050年度までに償還)とカーボンプライシング(CP)の導入であり、これらを通して大胆な先行投資を支援する。ここでは多排出産業だけでなく一律に炭素排出負担金を求めることから、社会全体の課題となっている。
石炭火力・原子力・バイオマス発電の新技術として、 石炭火力発電を脱炭素化する革新的低炭素石炭火力発電、原子核の熱振動等の基本的な物理現象のみで異常発生時の原子炉停止や崩壊熱除去を行う受動安全原子炉、木質バイオマス燃料の安定的・効率的な供給を可能とする早生樹の活用を取り上げた。
今回の調査研究で脱炭素による社会構造の転換事例をみることができた。最終目標の一つである日本の産業競争力強化のため新たな取り組みにチャレンジすることが重要であるといえる。ただし、既存概念を払拭しコンセンサスを得ていく努力も必要である。